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ナットの冷間鍛造化

インサートナットの工法と冷間鍛造の優位性

1. インサートナットとは?

インサートナットとは、樹脂製品やアルミダイカスト製品などの母材に圧入または埋め込みを行うことで、強固なねじ締結機能を実現するための部品です。

プラスチック製筐体や機械部品の軽量化が進む現代製造業において、耐久性を確保しつつ繰り返しの着脱を可能にする要素として広く利用されています。特に自動車部品、電子機器、産業機械といった分野では、インサートナットの存在は不可欠であり、信頼性の高い締結技術の基盤を担っています。

樹脂や軽金属はねじ山の強度が低く、直接ねじ込むと摩耗や破損が起こりやすいという課題を持ちます。その課題を解決するのがインサートナットであり、金属製のナットを母材に挿入することで、高いトルクや荷重に耐えるねじ固定が可能となります。また、表面に施されるローレット加工や溝形状は、母材との高い密着性を確保し、振動環境下でも緩みにくい締結を実現します。

インサートナットには形状や寸法の多様性があり、熱圧入タイプ、超音波圧入タイプ、ねじ込みタイプなど、用途に応じて最適な形式が選定されます。製造業における設計担当者や購買担当者にとって、適切な工法と製造技術を理解することは、製品信頼性の確保とコスト最適化に直結する重要な検討事項となります。

2. インサートナットの工法の種類と選定のポイント

インサートナットは多様な工法によって母材へ取り付けられます。それぞれの工法には特性と適用条件があり、用途や部品形状、製造工程に応じた選定が求められます。

熱圧入工法

熱圧入は、ナットを加熱したうえで樹脂母材に圧入する方法です。金属の熱伝導により樹脂が局部的に溶融し、ナットが冷却されることで強固に固着します。設備投資が比較的少なく、安定した強度を得やすい点がメリットです。大量生産ラインで採用されるケースが多く、樹脂製筐体を扱う電気電子業界では標準的な工法とされています。

超音波圧入工法

超音波圧入は、超音波振動によって樹脂を瞬間的に溶融させ、ナットを埋め込む方法です。局所的に熱を加えるため樹脂全体への熱影響が少なく、外観品質を保持できる点が特徴です。複雑形状の筐体や、外観品質が重視される精密機器に適しています。

ねじ込み工法

ナット外周にローレットを施したインサートナットを、樹脂母材に直接ねじ込む工法です。専用の工具を用いて簡便に取り付け可能で、小ロット生産や試作段階での利用に向いています。ただし圧入や超音波に比べると保持力が劣る場合があるため、使用環境に応じたトルク評価が欠かせません。

成形同時挿入工法

樹脂射出成形時にインサートナットを金型内にあらかじめ配置し、成形と同時に埋め込む方法です。成形品との一体化が実現でき、高い強度と位置精度を確保できます。量産に適している一方で、成形不良が発生した場合にインサートナットも廃棄となるリスクがあるため、生産効率と歩留まりを考慮した判断が必要です。

選定のポイント

インサートナットの工法を選定する際は、以下の観点が重要です。

  • 使用環境の荷重条件:高トルク環境では成形同時挿入や熱圧入が有効。
  • 外観品質の要求度:見栄えが重要な製品では超音波圧入が優位。
  • 生産数量とコスト:大量生産なら成形同時挿入、少量生産ならねじ込み工法。
  • 母材の材質と形状:樹脂種や板厚によって最適な工法が異なる。

設計段階での適切な工法選定は、後工程の手戻りや不具合発生を防ぎ、トータルコストの最適化を実現する上で不可欠です。

3. インサートナットを冷間鍛造を用いて製造するメリット

インサートナット自体の製造工法にもさまざまな手法がありますが、中でも冷間鍛造は高品質かつコスト効率の高い方法として注目されています。冷間鍛造は常温に近い温度で金属を塑性変形させることで、切削加工に比べて高い寸法精度と表面品質を実現します。

高精度な寸法と安定品質

冷間鍛造によって成形されたインサートナットは、外径や内径寸法のばらつきが少なく、ローレット加工部の精度も高く保たれます。これにより母材との嵌合精度が安定し、圧入後の保持力や繰り返し使用時の信頼性が向上します。特に大量生産が前提となる自動車や産業機械の分野では、品質の安定性は調達担当者にとって大きな魅力となります。

材料歩留まりとコスト削減

切削加工では素材の大部分を削り落とすため歩留まりが低く、材料コストが高くなりがちです。一方、冷間鍛造は素材を塑性変形させて形状を作り込むため、材料利用効率が高く、大幅なコスト削減が可能です。購買部門にとっては、品質を維持しつつコストダウンを実現できる選択肢として非常に有効です。

機械的特性の向上

冷間鍛造により金属の結晶粒が微細化され、強度や耐摩耗性が向上します。これにより、振動や高荷重環境下でも緩みにくい高耐久なインサートナットが実現可能です。特に高い信頼性が要求される輸送機器や精密機械においては、冷間鍛造品の採用が設計者に安心感を与えます。

量産性とリードタイム短縮

冷間鍛造は多段式のプレス機を用いた連続生産が可能で、大量生産に適しています。高い生産効率により納期短縮を実現でき、サプライチェーン全体の柔軟性を高めます。購買担当者にとっては、安定供給とコスト最適化を同時に達成できる点が大きな魅力です。

環境対応と持続可能性

冷間鍛造は切削粉をほとんど発生させないため、廃棄物削減と環境負荷低減につながります。省資源化やカーボンニュートラルが求められる現代製造業において、環境対応力は企業価値を高めることができます。2025年、大阪万博でも多くのパビリオンが、環境をテーマに据えて出展をしています。環境に適した持続的な社会を作る工法として、冷間鍛造は有効であるといえます。

 

5.ミナミダが過去製造したインサートナット事例

ミナミダはこれまで、様々な産業分野において、お客様の課題解決に貢献するインサートナットを数多く手掛けてまいりました。特に自動車業界においては、高い品質と信頼性が求められる重要部品の製造実績が豊富です。以下に、ミナミダが過去に製造したインサートナットの事例を紹介いたします。

5-1.自動車バンパー用埋め込みインサートナット

自動車のバンパー部材は、軽量化とコストダウンのために樹脂化が進んでいます。ミナミダは、この樹脂バンパーへの確実な部品取り付けを実現する埋め込みインサートナットを製造した実績がございます。この事例では、高い締結力と耐振動性が求められ、ミナミダの冷間鍛造技術がその要求に応えました。詳細はこちらを参照いただきたいです。自動車バンパー用埋め込みインサートナットこの事例は、ミナミダの冷間鍛造技術が、自動車産業の厳しい要求に応え続けてきた証です。EVバッテリーの進化に伴い、インサートナットへの要求はさらに高度化していますが、ミナミダは常に最先端の技術と経験で、お客様の期待を超える製品を提供し続けます。

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5-2.建設機械の樹脂ケース締結用インサートナット

本事例は、冷間鍛造.comが得意とする建設機械の樹脂ケースの締結を行うインサートナットです。材質はSWCH10Rを用いており、製品サイズはφ16×13(mm)、φ9.9の貫通穴加工も行っています。ロットの最大数は30,000個です。本事例の加工工程は、圧造→ローレット→タップ→メッキを行っています。今回製造した製品は、元々、切削で製造していましたが、当社からパーツフォーマーによる冷間鍛造での製造を提案し、仕上げのローレット・タップ・めっき処理も当社で行い、コストダウンを実現しました。

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