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アルミボルトのすべて:軽量化と高強度を両立するミナミダの冷間鍛造技術
近年、自動車や建設機械の分野では、環境負荷低減や燃費向上、性能向上の観点から、部品の軽量化が喫緊の課題となっています。その中で、「アルミボルト」は、その軽量性と特定の条件下での優れた特性から、次世代の締結部品として注目を集めています。ミナミダは、長年の冷間鍛造技術を駆使し、高精度かつ高強度なアルミボルトの製造に貢献しています。
1. アルミボルトとは?アルミボルトの種類と特徴について解説
アルミボルトとは、アルミニウムを素材としたボルトのことです。最大の特長は、鉄の約3分の1という比重の軽さにあります。この軽量性により、自動車や建設機械の総重量を削減し、燃費効率の向上や運動性能の改善に大きく寄与します。また、アルミは優れた熱伝導性も持ち、放熱性を必要とする箇所での使用にも適しています。さらに、空気中で強固な酸化被膜を形成するため、優れた耐食性を発揮し、リサイクル性にも優れています。
自動車系では、EV化が進み、車体重量の増加がエネルギー効率の観点で課題となっています。今回、ご紹介するアルミ材を素材としたボルト製品はバッテリーにより車体重量が増加する中で構成部品の軽量化を実現し、エネルギー効率の改善に寄与することができます。
国内ではEVが一般道を走っていることも珍しくなくなってきています。さらに、建設機械市場においてもバッテリー化を進めることでGX需要を取り込む市場トレンドが形成されつつあります。当社ではボルト製品のアルミ化により軽量化を実現し、最終製品に対する付加価値向上をご提案しています。
2. アルミボルトがどのような用途で使われるのか?
アルミボルトの軽量性、耐食性、熱伝導性といった特性は、多岐にわたる産業分野で活用されています。特に、自動車や建設機械の分野では、そのメリットが最大限に活かされています。
- 自動車部品:エンジンルーム内や足回り部品、ボディ、内装部品など、軽量化が求められるあらゆる箇所でアルミボルトの採用が進んでいます。特に、電動化の進展に伴い、バッテリー周りやモーター部品などでの使用が増加しています。
- 建設機械部品:大型の建設機械においても、軽量化は運搬効率の向上や燃費改善に直結します。油圧ショベルやクレーンなどの可動部、フレームなどでの使用が考えられます。
- 電気・電子機器:熱伝導性の高さから、放熱が必要な電子機器の内部部品や、軽量化が求められるモバイル機器などでも利用されます。
- 航空機部品:極限までの軽量化が求められる航空機分野では、アルミボルトは非常に重要な部品です。
- 医療機器:磁気の影響を受けやすい医療機器の部品にも、非磁性であるアルミが使用されることがあります。
軽量化による輸送コストの削減、燃費効率の向上、そしてCO2排出量削減といった環境負荷低減への貢献は、アルミボルトの採用を加速させる大きな要因となっています。
3. アルミボルトの素材選定におけるポイント
アルミボルトの素材選定においては、用途や求められる性能に応じて複数のポイントを考慮する必要があります。
- 強度:アルミニウム合金には様々な種類があり、強度も異なります。自動車部品や建設機械部品のような高い締結力が求められる用途では、A6056材やA7050材といった高強度アルミニウム合金の選定が重要です。ミナミダでは、応力腐食割れリスクの少ないA6056材を中心にご提案し、材料としての強度を冷間鍛造技術と組み合わせることで、さらに高い引張強度を持つアルミボルトを提供しています。
- 耐食性:アルミニウム自体は酸化被膜により耐食性に優れますが、特定の環境下(塩害環境など)では表面処理(アルマイト処理など)を施すことで、さらに耐食性を向上させることができます。また、異種金属との電位差による電食(異種金属接触腐食)を防ぐため、相手材がアルミの場合にはアルミボルトの使用が有利です。
- 加工性:アルミニウムは鉄に比べて伸びが悪く、冷間鍛造においては割れや「す」(内部の空隙)が生じやすい特性があります。そのため、アルミ材の加工には高い技術とノウハウが求められます。
- 熱膨張係数:アルミは鉄に比べて熱膨張係数が大きいため、温度変化が大きい環境下で使用する場合、締結部の緩み対策など特別な配慮が必要です。
- コスト:素材の種類や加工方法によってコストは変動します。求められる性能とコストのバランスを考慮した選定が重要です。
ミナミダは、お客様の用途や要求性能を詳細にヒアリングし、最適なアルミニウム合金の選定から加工方法まで、総合的な視点で最適な工法をご提案する部品メーカーです。
4. ミナミダが提供する冷間鍛造によるアルミボルト成形の特徴
ミナミダは、アルミニウムを素材としたボルトの成形において、長年培ってきた冷間鍛造技術を最大限に活用しています。冷間鍛造は、金属を常温のまま金型で塑性加工する技術であり、ミナミダのアルミボルト製造における強みは以下の点にあります。
- 高強度化の実現:アルミニウム材は一般的に「伸びが悪く」、鉄のボルトと同様の条件で冷間加工すると割れや「す」が生じやすい特性を持ちます。しかし、ミナミダは、長年の経験と独自のノウハウに基づいた「アルミボルト専用の加工条件」を開発しています。これにより、A6056材など高強度アルミニウム合金を冷間鍛造で精密に成形し、材料本来の強度をさらに高めることが可能です。引張強度においては、材料単体よりも高強度なアルミボルトの製造を実現しています。
- 複雑形状への対応:鉄ボルトで一般的に見られる六角フランジヘッドなどの複雑な形状も、ミナミダの冷間鍛造技術であれば高い精度で成形が可能です。これにより、設計の自由度を高め、お客様の多様なニーズに応えることができます。
- コスト効率の向上と品質安定性:冷間鍛造は切削加工に比べて材料歩留まりが良く、加工時間を短縮できるため、大量生産において高いコスト競争力を発揮します。また、連続的な塑性加工により、寸法精度と製品品質のばらつきを抑え、安定した品質のアルミボルトを提供します。
- 豊富な締結ノウハウ:ミナミダは、アルミボルトの機械的性質(熱による強度への影響、疲労強度など)や摩擦係数のコントロール法について、長年の研究で多くの知見を有しています。素材強度が鉄とは異なるアルミボルトの締結において、その成立には締結方法など多くの工夫が必要ですが、これらのノウハウがミナミダの強みです。
ミナミダの冷間鍛造技術は、単にボルトを成形するだけでなく、アルミニウムという素材の特性を最大限に引き出し、お客様の製品の軽量化と性能向上に貢献する高付加価値なアルミボルトを提供します。
5. ミナミダが過去製造したアルミボルト事例
ミナミダは、これまで数多くのアルミボルトの製造実績を重ねてきました。ここでは、特に自動車業界向けのラジエーター部品として採用されたアルミボルトの事例をご紹介します。
5-1.ローヘッドボルト-自動車業界向けラジエーター部品-
本事例は、自動車業界向けのローヘッドボルト部品です。特徴としては、頭部に特殊なギア形状が施されている異形状をしている点と、低頭・薄肉である点が挙げられます。
また、従来は鉄で製作されていた部品をアルミ材に変更することで軽量化を実現しております。
軽量化を実現するために低頭・薄肉形状を有しておりますが、3ロール転造盤により薄肉製品へのネジ加工が可能です。
5-2.自動車向けラジエーター用アルミボルト
本事例は、自動車向けラジエーター用アルミボルト製品のスペックとしては記載の通りです。M16×10mmと高さはあまりない製品です。加工におけるポイントは以下の2点です。
1点目が、貫通穴を行いながらM16の雄ねじとなっているため、肉厚が薄くなっている点で、成形を行う工程で変形し易いので、特殊な3ロール転造機でネジの転造加工を行っています。2
ミナミダは、お客様の製品の性能向上とコスト最適化に貢献するため、今後もアルミボルトの製造技術の深化と発展に努めてまいります。アルミボルトの採用をご検討の際は、ぜひミナミダにご相談ください。